江戸吉原グルメガイド 最大の歓楽街吉原は、観光地でもあり”グルメ天国”でもあった!
はじめての吉原ガイドブック
■吉原一の名物として売られた豆腐と甘露梅
揚屋町(あげやまち)にあった豆腐屋「山屋(やまや)」の豆腐も吉原名物で、「山や豆腐」といって賞玩(しょうがん)された。
『江戸塵拾』(明和4年頃)に、
「吉原第一の名物也。この豆腐は角田川の水を以て製す。あじわいかろくして、他にならびなし」
と称賛している。
角田川は隅田川のこと。
甘露梅(かんろうめ)は、梅の実を紫蘇の葉で巻いた砂糖漬けだが、吉原名物でもあった。
5月になると、引手茶屋が芸者に声をかけて集め、甘露梅を手作りした。引手茶屋では酒や料理を出して、手伝いに来た芸者をねぎらう。
2、30人もの芸者が集まるのだから、にぎやかであり、また華やかだった。甘露梅作りそのものが吉原の風物詩となっていたと言えよう。
【図3】に、甘露梅作りの様子が描かれている。
引手茶屋では、こうした手作りの甘露梅を客に贈答品として配った。客にとっては、吉原でしか手に入れられない名物だった。

【図3】甘露梅作りの様子。『春色梅美婦禰』為永春水著/天保13年(1842)刊、国会図書館蔵